なぜOpen Source Summit Japanのボランティアに参加?
2025年12月8〜10日に東京・虎ノ門ヒルズで開催された、The Linux Foundation主催の「Open Source Summit Japan 2025」にボランティアとして参加してきました。
このイベントはグローバルカンファレンスで、3日間・160ほどのセッションがすべて英語で行われます。
今は仕事では英語を使う機会はほとんどないのですが、前職では海外のエンジニアとオンラインでミーティングしたり、チャットでコミュニケーションを取ったりしていました。
その時の「海外のエンジニアと話す楽しさ」がずっと残っていて、もう一度あの感覚に触れたいという気持ちがありました。
英語で技術の話を聞いてみたい。
できれば海外のエンジニアとも話してみたい。
もちろん、Open Sourceが好きなのは言うまでもありません。
そして、過去のSummitの記事を読んでみると、Linus Torvaldsが登壇した年もあったとのことで、「もしかして今回は話を聞けるかも?」という小さな期待もありました。
ボランティアに興味を持つきっかけになったのは、Think ITのボランティア紹介記事です。
内容がとても分かりやすく、これを読んで「自分もやってみようかな」と思うようになりました。
私の記事も、これからボランティア参加を考えているエンジニアの方の参考になれば嬉しいです。

ボランティア初日の印象と、グローバルカンファレンスの空気感
1日目と言っても、前日のDay0から準備で現地入りしているメンバーもいます。
私は当日朝7時頃に集合し、ボランティアルームに集まって、The Linux Foundationの水色のスタッフポロシャツを受け取ったところで一気に気分が高まりました。
例年参加しているベテランのメンバーもいれば、私のように今年初めての参加という人もいます。
日本の企業が主催するITイベントだと、参加者はスーツ姿のビジネスマンが多いと思いますが、Summitに来ている海外エンジニアは誰もスーツなんて着ていません。Tシャツの人もいれば、髭の長いエンジニア、長髪のエンジニアもいて、とにかくインターナショナルで自由な雰囲気。日本人の参加者もほぼ私服でした。これは良いなと思います。
スタッフポロシャツのパワーなのか、案内誘導で立っている時に “Good Morning!” と挨拶すると、みんな笑顔で返してくれて、どこから来ました?と聞くと気さくに答えてくれます。
「Speaker」と書かれたIDをつけている人にも、どんな内容を話されるんですか?と聞くと、嬉しそうに説明してくれました。
あとでボランティア歴10年のメンバーに「あの人、毎年話す有名な人だよ」と教えてもらい、知らなかったのは自分だけでした(笑)
IDカードに貼るシールの色で「話しかけて良いかどうか」が分かる仕組みなのですが、シールを貼っていない人も結構多かった印象です。
ボランティア業務のリアル
スタッフポロシャツを着ていると、海外からの参加者に話しかけられることも多いです。
「展示ブースはどこですか?」「スモーキングルームはありますか?」などなど。
Breakout Sessionの進行を担当する時は、セッション開始前にSpeakerの方と話す機会もあります。
PC画面がスクリーンにちゃんと映るか、マイクチェックは問題ないか、その確認が終わると開始まで軽く雑談したりします。
「日本は初めてですか?」「どこに行く予定ですか?」と聞くと、何人かは「大阪に行くよ」と言っていて、皆さん旅行も楽しみにしている感じでした。
セッションが始まると、最後のQ&Aで質問者がいるか確認し、マイクを持って行ったり、参加者数を数えてSlackに報告したりと、運営に関わっている実感がしっかりあります。
終了時間を知らせるための「5分前・3分前・1分前」のカンペも用意されていたのですが、私が担当したセッションはどれもスムーズで、少し早めに終わることが多かったです。
クロークで上着や荷物を預かり、番号札を渡す仕事もありました。
エンジニアの仕事ではないですが、イベント運営ではとても大事な役割です。
Registration(受付)を担当した時間もあります。
ラストネームのアルファベット順にIDカードが並んでいて、来場者の名前を聞き、スポンサーのGoogleロゴ入りストラップをつけて渡します。
「TのところにLinusのカードがないから、もしかして顔パスなのでは?」と冗談を言っていたら、Linux Kernel Maintainer Summit のIDカードの方にありました(笑)
また、興味があるセッションは事前に希望を出すと、そのセッションのスタッフに優先的にアサインされる仕組みもあります。
私はLinusのKeynote を希望しました。
ボランティア業務が割り振られていない待機時間は、自分が聴きたいセッションに自由に参加することもできます。
Linus TorvaldsのKeynote
LinusはLinux Kernel Maintainer Summitが東京で有るので来た様です。
Keynoteの内容はこちら↓

LinusのKeynote はメインホールが満員で、席が埋まりきっていました。
「Creator of Linux & Git」と紹介されて壇上に上がると、会場中の人が一斉にスマホを構えて写真を撮っていました。
私も写真を撮りましたが、それよりも “自分が毎日触れている Linux を作った本人が今ここにいる” という興奮のほうが強くて、正直あまり話の内容に集中できませんでした(笑)
途中で Linus が「Git使ってる人どれくらいいますか?」と聴衆に尋ねる場面があり、そこで会場にいるほぼ全員の手が一斉に上がりました。
その光景を見たとき、なんとも言えない感動がありました。
Keynoteの終盤では、「自分はまだ世界の王じゃないので」と言って笑いが起きていました。
このあたり、Linux界ではお馴染みのネタなんでしょうか。
私が参加した Cloudflare のエンジニアのセッションでも「Linux は民主的だけど王はいるんだ」と言って、王冠をかぶったLinusの画像がスライドに出て、会場が笑いに包まれていました。
海外エンジニアとの交流 – 英語でのコミュニケーションについて
今回、覚えている限り10ヶ国以上のエンジニアと話すことができました。
特に印象に残っているのは、エジプトから来た青年です。
今年の春から京都の大学に留学していて、Open Sourceに興味があるとのことでした。
「どうやってSummitを知ったの?」と聞くと、1週間前にネットで見つけたと言うので驚きました。関東に来るのは今回が初めてで、これから秋葉原に行く予定だとも話していて、その行動力に感心しました。
Summitはアメリカ人やイギリス人ばかりではないので、本当にいろいろな英語があります。
今回はAutomotive Linux Summitも同時開催されていたこともあり、車載組み込みLinuxのセッションが多く、日本の自動車メーカーのエンジニアが登壇している場面もありました。
私が参加したあるセッションのスピーカーは、「流暢に話すこと」をまったく重視していない感じでした。
ネイティブっぽく話そうとしているわけでもなく、淡々とでもしっかり熱意を持って伝えたい内容を話しているだけなのですが、海外のエンジニアたちは大きく頷きながら真剣に聞いていたのが印象的でした。
英語は“流暢さを競うもの”ではなく、“何かを伝えるための手段なんだ”と、改めて感じさせられました。
ボランティア参加して良かったこと
イベントにお客さんとして参加するのと、運営側として参加するのとでは、見える景色が本当にまったく違います。
朝から会場の準備をして参加者を迎え、セッションの進行をサポートする。
その一つひとつの場面で、自分が“グローバルカンファレンスの一員として動いている”実感がありました。
エンジニアとしての視野も一気に広がるし、世界とつながっている感じがとても強い。
こういう体験は普段の業務ではまず得られないので、素直に刺激になりましたし、参加して本当に良かったと思っています。
